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ひかわきょうこ『彼方から』

彼方から (1)

風邪で寝込む前に手に入れて、病床から今までリピートしまくりの今日の読書。漫画だけど。文庫版最終巻の第7巻が2005年3月15日にめでたく発売になったので、感想解禁。ちょっと夢見がちなごく普通の女子高生、立木典子が無差別爆破事件に巻き込まれた拍子に全く別の世界に飛ばされてしまい、そこで異世界人の青年、イザークと出会う…というべったべたなファンタジーです。

ていうか、ブログに移ってからは一度も言ったことないと思うんですが、ふうこ基本は SF 嫌いのファンタジー敬遠派なんです。まぁ SF にしろファンタジーにしろ、上質なものはちゃんと面白いって知ってはいるのだけど、プロアマ問わず選択肢が多すぎるのと、人気があるということと(ふうこの基準で)上質ということがイコールにならないことが多いのとで食わず嫌い。これも雑誌連載時に見ていなかったら手に取らなかったでしょう。まぁ本作は2004年度星雲賞コミック部門を受賞されたとのことで、ファンタジーとしての完成度は折り紙付きか。

で、内容ですが。よくも悪くも『少女漫画』で表現されたファンタジーです。人を驚かせるようなスケールの大きさはあまり感じませんが、がっちりと隙なく構築された世界観の中で、人々の暖かい励ましや手助けに支えられ、ノリコとイザークは巨大な悪に立ち向かって行きます。そして主眼はもちろん「愛」。ノリコとイザークのほのぼのした愛の交歓も少女漫画ならではの見所でしょう。

ファンタジーのとしてのクオリティを主眼に落ち着いて読んでみると、物語に少しも揺らぎがなく、全ての道が真っ直ぐに結末に向かって進んでいることに驚かされます。小さな描写にもこだわりがあり、後からあれ、あの時アレはどうなってたのかなと振り返ると何気ない台詞や描写できっちりとフォローがあったりして、大きく描くべきことと小さくても盛り込むべきことの取捨選択の細やかさ、少女漫画一筋に積み重ねてきた物語作りの職人技に脱帽することしきり。ただ、それが逆に「作り話」がもつダイナミズムを殺している部分もありますが…。これは作者の個性と言うべきなんでしょう。連載中何度も体調を崩し、コミックスで全14巻という長さにもかかわらず連載期間は足掛け12年に及んだと言う物理的事情もあります。また、基本的に作画作業の一部を除いてアシスタントをお使いにならないということで、このクオリティをひとりで紡ぎだしたその我慢と集中力、編集側の理解と協力を考えるとまたひとついいもん見せてもらったという感慨が深くなるというものです。

ま、そういうのはただの外向けの御託でして、ぶっちゃけふうこがこの話を好きなのはイザークが死ぬほど好みのど真ん中ということに尽きるんですが。黒髪の直毛(イザークは微妙にうねってるけど)、切れ長のつり目、全体的に細めだがしなやかでパワーを秘めた体つき、寡黙で無愛想な人当たりの割に熱い内面。いやだわぁ好きだわぁ。もともとふうこは金髪碧眼より黒髪の方が好きでしてね。シャアよりカミーユ。氷河より紫龍…じゃなくて瞬だったりしたけど。どっちも緑髪じゃないか。まぁ分からない方にはすっぱり読み飛ばして頂いて。こういうのは理屈じゃないのでね。


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