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恩田陸『禁じられた楽園』

禁じられた楽園

徳間書店刊『問題小説』で連載されていたものの単行本化。これが連載されていた頃、基本的に氏の作品は雑誌連載から追いかけていたんですが、これに限ってはどうも無理、と第1回を見ただけで止めてました。

さて、この本を読む前に、先に読んだお友達に感想を聞く機会があったのです。すると、どうも歯切れが悪い。

お友達うーん… なんか、文章が下手

…えっ? キャラクター造形はまるでマンガを地でいき、ストーリーには殆ど明確なオチはなく、ジャンルもふうこの好まないホラー・SFを得意(というより好きなんだよね、本人が)とする恩田陸。でも、すげぇ読めるんですよ。門外漢をぐいぐい引き込む文章力こそ、私がなんだかんだ文句を言いながら追っかけ続けている所以なのですが…それがそんなに唐突になくなるもんか?

で、読んでみました。…お友達の言いたいことは分かる気がしました。特にキャラクター描写。

いつもの恩田キャラなら、マンガみたいな美少女だろうと平凡な脇キャラだろうと必ず独特のものの考え方を持っていて、ふうこにとっては私たちと同じようで違っている彼らが捉えている現実とか世間とか、そういったものを通して「恩田陸」の捉える「世界」を覗くのが一つの楽しみでもありました。ところが今回の登場人物の心理描写やモノローグはどれも平凡…というよりむしろ卑近な感じ。あまつさえ、括弧付きで補足描写まであったり…どう考えても恩田陸の文体じゃない。何が起こったんだ?

が、何故か後半からはそういうところはなりをひそめ、正体不明ではあるんだけど怖くない、未知との遭遇にも似た恩田ワールドが展開されていました。前半の加速が足りない分、後半乗り切れませんでしたが…

『問題小説』という雑誌自体、普段の恩田氏の活動範囲から考えるとひどく特異な印象があるので、もしかするとこの連載、ご本人の中で試行錯誤があったのかもしれません。巻末の連載から大幅に加筆修正したという旨の一文に、ちょっぴり産みの苦しみを見た一冊でした。


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