CONTENTS

内田康夫『風葬の城』

風葬の城

投稿日時現在書影が出ませんけども、祥伝社の文庫版です。実は初めて読む内田作品。とは言いながら多方面に露出のある浅見光彦シリーズですから、秋田書店刊『サスペリア・ミステリー』でのコミカライズで馴染みはあったりしますが。

実は内田氏は、ふうこ的に「読まず嫌い作家」3巨頭のうちの一人だったりします。ちなみに後の2人は森博嗣と赤川次郎。お友達に紹介されて参加した名探偵知名度調査の途中経過で犀川創平が1位だった時にはカルチャーショックだったわー(最終結果でシャーロック・ホームズになったのにはマジほっとした)。

で、それはともかく、今回の読書では単なる「読まず嫌い」から一つの確信を得るに至りました。つまり、ふうこは浅見光彦が好かんと。何が好かんかと言えば、あの捉えどころのない感じがどうにも。「ハンサムでおぼっちゃん」という変なつかみだけ良さそうな第一印象、居候とか言ってごにょごにょしてる割に車がソアラだったりとか(しかもソアラだよ…車道楽にしても車種が微妙すぎ)、何よりも、なんで警察に対してだけあんなに生意気なのかがさっぱり理解できず。突出した推理力によって周囲と溝ができているという表現なのかもしれませんが、あの態度はどうもふうこがミステリに求める「痛快さ」に結びつきにくいです。

何かと光彦の頭を押さえつける母親の雪江の傲慢さも作品を好きになれない要因の一つ。傲慢といっても、彼女は単に世界の捉え方が光彦のそれと全く相容れないが故に母の務めとして苦言を呈しているだけのことなんですが、こういう自分の知っている世界しか認めないおばさんっていうのも残念ながらふうこの悪い方のツボにジャストミートなのです。光彦を散々胡乱な人物扱いしていたのに兄が警視庁の刑事局長だと知るところっと態度を変える警察も今イチ。兄貴の印籠効き過ぎ。…まぁ、現実にはままあることなのかもしれませんが。

と、ちょろちょろ言い訳めいたものを挟んでいることからお察し頂きたいのですが、内田氏自体がダメというより、登場人物の造型がことごとく好きじゃない方向に進んでいくのがダメなようです。もう相性の問題ですね。

…てなことを考えながら最後まで読み終えて、「作者あとがき」を読んでいたら。げっ。どこまで書いたらネタバレにならないかが不明ですが、とにかく叙述の視点をいつもと変えたと書いてあります。…てこた、この本の描写はいつもの浅見の描写じゃないってことか。とはいえ、それでもいつもと同じ印象を得られたということは、浅見のキャラクターが確信をもって造形されているという証左でしょう。それは内田康夫という作家の地力を示すものだと思いますが…やっぱり好かんなぁ。


Received Comments(投稿順)

No Comment
コメントはありません。
Comment Form
  • URI は自動的にリンクされます。
  • HTML タグは使えません(そのまま表示されます)。
  • JavaScript を有効にしないと投稿できません。

Trackback Address

http://wannabe.sweet-smile.org/tb.cgi/172

Received Trackback(受信順)

アトノマツリ【after_you-festa】 〜アトマツ家のミステリな読書日記 on 2005-07-22T09:06
内田康夫『風葬の城』
風葬の城posted with amazlet at 05.07.19内田 康夫 講談社 (1995/07)売り上げランキング: 285,145Amazon.co.jp で詳細を見る『白虎隊のふるさと、会津を訪れた浅見光彦の目の前で塗師平野が謎の死を遂げた。折りしも東京で歯科技工士と...

NAVIGATION

Entry Jump

ランダムセレクト
上のリンクをクリックすると、ランダムに選択された記事に飛びます。

Profile

SereneBachオフィシャルガイド
好評発売中です

Recent Entries

Categories

Archives

Others