創元推理文庫による復刊第3弾。…本書解説の折原一も言っていたが、~の殺意
という名前がずらずら続くのはちょっと混乱するなぁ。かといってオリジナルタイトルの高校野球殺人事件
ってのも散文的に過ぎるけども。
で、今回の読書は、途中まではあまりよくない評価を書くつもりだったのです。というのが、物語の割と最初の方で何となくこいつ犯人じゃないかなぁ
と思ったやつがまんまと犯人だったので。これって、野球で言ったらすごいボールを持ってるけど投球モーションで球種が読まれてしまうピッチャー
だろ。バッティングセンターで 150km/h のストレートをがんがん打つ素人がいることでも分かるとおり、球種がバレたら8割方打たれたようなもんだ。
ところが、こいつしかいない
と思ってからそいつを追い詰めるまでの物語の運び方が存外によかったのでした。論理のアクロバット
とまではいえないけれど、論理の隙間をひとつひとつ埋めていって、完成した瞬間に物語が冒頭部分にループする、その感覚が気持ちよかった。何の推理もせずに犯人が分かってしまうほど、ある意味ワンパターンな語り口の著者ではありますが、今回の物語はその特徴を十分生かした読める話
になっていたと思います。調子がよければくると分かってても打てない
というほど切れてる時もあるということですな。ごちそうさまー。